紙製容器包装製造業による環境汚染の現状に対する解決策
紙製容器包装製造業をはじめとする製紙産業はベトナム国において潜在力があり、加速度的に発展していく業界であると評価されている一方で、ベトナム天然資源環境省の上水関連国家指導委員会によると、水源汚染をはじめとした環境汚染を最も引き起こす業界の一つであるとされている。一例としてミ・ルオン村(ミチョン・ハノイ)に所在するドンド紙・包装株式会社のケースを挙げると、周辺住民は同社が田畑内の運河、用水路へ直接下水を排出し、住民の水源及び農地に深刻な悪影響を及ぼしているという現状を最近頻繁に訴えた。
この例からも分かるように、紙製容器包装製造業を奨励・援助し、長期発展させるための方向性を策定すると同時に、廃棄物を適切に処理し環境汚染を減らす方法を模索することはベトナム政府及びこの業界の企業にとって非常に難しい課題である。
容器包装製造業廃棄物の生活環境への影響
環境研究専門家の分析結果によると、紙製容器包装製造業の排水には主にリグニン及びリグニン誘導体から生成されたCOD(化学的酸素要求量)の含有量(22,000-46,500 mg/l)がかなり高く、許容範囲を超えている。これらの有機化合物は高濃度の毒性があるだけではなく、自然な環境において分解しにくいものである。したがって、これらの化合物に対する処理方法を迅速に開発しなければ、容器包装製造工場の排水は生活環境に悪影響を与えるだけでなく、工場周辺住民が癌に罹る主な要因となる。
また、製紙産業の抄紙の工程において、完成品が出来上がるまでにテレピン油、着色剤、カオリンなど多くの化合物及び添加物が使用される。それらの化合物が未回収若しくは未処理でそのまま水源に直接排出されれば、水質汚染の問題を引き起こすことは必至であり、それと同時に生活環境、水産物の生態系への悪影響も懸念される。
ベトナム政府の対策
1/ 廃棄物の含有量に対する技術基準の公布
生活環境に対する廃棄物の悪影響を認識した上で、ベトナム政府はベトナム天然資源環境省と協力し、自然環境へ排出された排水に含まれる化学物質の許容可能な最大含有量に関する規定を公布した。それによると、製紙産業及び紙製容器包装製造工場から水域へ排出される産業排水内の汚染物質濃度の許容値は次の通りに算出される:
Cmax = C × Kq × Kf
備考:
・Cmaxとは、水域へ排出される産業排水内の汚染物質濃度の最大許容値である。
・Cとは、一般的な製紙産業における汚染物質濃度の値である。
・Kqとは、河川、小川、運河、用水路の流量、又は湖沼や貯水池の容積、又は海岸水域の使用目的に応じた排水先の係数である。
・Kfとは、製造施設から水域へ排出される産業排水の総流量に対応した排水源の流量係数である。
上記の算出法に基づいて、管轄機関は標本抽出法にてpH、温度、BOD5(5日間の酸素要求量)、COD、総浮遊物質、色度及びAOX(吸着性有機ハロゲン化合物)などの項目の値を測定することによって、排出された汚染物質の含有量を確認できる。本規定を違反、もしくは技術基準値を超過したいかなる製造企業も高額な罰金を課される。
2/ 罰金と対策
紙製容器包装製造業をはじめとする製造産業に対する罰則として、環境保護法の第13条に基づき次のように罰金が課される。排水の技術基準値を超えた違反行為が2回未満である場合、1.000.000~700.000.000ドンの罰金が課される。違反回数が2回~5回未満の場合は10.000.000~750.000.000ドンの罰金が課され、5回目以降は罰金が20.000.000~950.000.000ドンに上がる。
さらに、各項目の汚染物質が技術基準値を超える違反行為に対する罰金は、違反回数が2回未満の場合は1%、2回~5回未満の場合が2%、5回~10回未満の場合が3%、10回目以降が4%加算される。但し、違反行為に対する罰金の総額が1.000.000.000ドンを超えないものとする。
そのほか、企業が環境汚染を克服するための対策を関連法令として定める。詳細は以下の通り:
・違反に対する行政処分決定に基づいて、処分の権限を有する人若しくは機関が規定した期間内に、企業に環境汚染を克服するための対策を講じさせる。
・本条に掲げる規定の違反行為をした企業に対して、違反行為から得られた利益総額を行政処分による罰金として納付させる。
・排水の技術基準値を超えた結果、環境汚染をもたらす違反行為をした場合、環境サンプルの鑑定要求・実行・測定及び分析に関する費用を企業に支払わせる。
技術基準及び罰金関連規定の公布に加え、ベトナム政府は製紙産業と紙製容器包装製造業による環境被害を減らすために、製造工場の設備、技術をより厳密に管理しなければならない。同時に、全ての企業に公布された基準を遵守させるために、排水処理プロセスを常に確認していく必要がある。
上記の対応策により、近いうちにベトナムの製紙産業は確実に、政府が掲げた目標及び方向性を達成できる。このことにより、ベトナムの製紙産業は環境に配慮した産業の一つとなり、他の産業の発展を促進することが可能になるだろう。
By Marketing Department – Kizuna JV Corporation